1-5 医の倫理

医の倫理

倫理綱領

項目 説明
医の倫理 医療行為や医学研究における倫理的、道徳的な価値判断を含む。
バイオエシックス 生命科学的研究や医療における倫理的原則に基づく行動規範。1960年代半ばから使用。
生命倫理 ヒトの生命に関わる医療や研究における道徳的価値観や原則。
ジュネーブ宣言 1948年に作成された医療従事者の倫理に関する基本的な考えを示す宣言。
ヘルシンキ宣言 1964年に発表された、医師の研究における倫理的指針を示す宣言。
リスボン宣言 1981年に発表された、患者の医療に対する権利を宣言した文書。
生命倫理と人権に関する一般宣言 2005年にユネスコで採択された、事前同意や倫理委員会設置を提唱する宣言。
インフォームド・コンセント 患者が治療に関する情報を理解し、自ら選択する権利。

脳死と植物状態

項目 説明
脳死 脳全体の機能が失われ、回復不可能な状態。大脳半球と脳幹の機能が含まれる。
脳幹 脳の一部で、自律神経機能や呼吸などの基本的な機能を制御する。
死の3徴候 心拍停止、呼吸停止、瞳孔散大・対光反射消失の3つの特徴で、一般的な死の概念を示す。
臓器移植法 脳死判定に関する法的基準を定める法律。臓器摘出の際に適用される。
臨床的脳死 患者の臨床症状に基づく脳死の判断。深昏睡、瞳孔の固定、脳幹反射の消失、平坦脳波の4項目。
法的脳死判定 法律に基づく脳死判定。臨床的な4項目に加えて、自発呼吸の消失が必要。
除外例 脳死判定の際に除外される特定の症例(急性薬物中毒、低体温、代謝障害、15歳未満、知的障害)。
観察時間 脳死判定における第1回目と第2回目の間に必要な時間。通常6時間以上、6歳未満では24時間以上。
脳死判定医 脳死判定を行う医師。脳神経外科医や神経内科医などの専門資格を持ち、経験豊富な医師が担当。
植物状態 大脳半球は損傷しているが、脳幹の一部が機能している状態。脳死とは異なり回復の可能性がある。

臓器移植

項目 説明
臓器移植 脳死を人の死とし、心臓・肝臓などの臓器を移植することを認める法律に基づく医療行為。
臓器移植法 臓器の移植に関する法律。平成9年7月16日に公布され、臓器提供者の意思が最重要であると定められている。
平成21年7月に成立し、22年7月17日に施行された法改正で家族の承諾でも脳死の臓器提供が可能となる。
臓器提供者(ドナー) 臓器提供を行う死亡者のこと。基本的にその意思が最重要とされる。
意思表示カード 臓器提供に関する意思を示すための書面。15歳以上が書面で意思表示できる。
移植臓器 臓器移植法で提供が認められている臓器。心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、眼球(角膜)などが含まれる。
日本臓器移植ネットワーク 日本で唯一、臓器の斡旋を業として行うことが許可されている団体。
生前意思 死亡する前に本人が示す臓器提供に関する意思。改正法では家族の承諾があれば提供可能。
拒否の意思表示 臓器提供を拒否する意思を示すこと。改正法では書面でなくても、子供の意思も有効とされる。

インフォームド・コンセント

項目 説明
インフォームド・コンセント 「説明して納得の上の同意」と訳される概念。患者が説明を求め、その説明を理解した上で同意する権利。
説明義務 【病状】
患者の現在の健康状態。説明には病状や予後に関する情報も含まれる。
【治療や検査の選択肢】
医師が患者に対して治療や検査に関する説明を行う義務。患者が十分に理解できるようにする必要がある。
治療や検査において、患者に提示する複数の方法や選択肢。適切な自己決定を促すために必要。
【予後】
治療や検査後の患者の未来の状態。インフォームド・コンセントでは予後に関する説明も重要。
患者の権利 患者が治療や検査についての説明を求め、納得した上で同意する権利。医師はこの権利を尊重しなければならない。
診療録 患者の診療に関する記録。診療情報の開示には診療録や検査結果などが含まれる。
医療情報 診療録や検査結果などの情報。患者への開示が求められる。

情報開示

項目 説明
情報開示 診療記録にあるすべての診療情報を患者に見せること。適切な医療提供のために重要。
情報開示により治療効果を高めることができる。
インフォームド・コンセント 患者が医療情報を理解し、納得した上で治療に同意する権利。情報開示はこの考え方に基づいている。
プライバシーの権利に基づく患者の自己決定権。
患者の医療参加 患者が積極的に医療に参加すること。情報開示はこの参加を促進する。
医師・患者関係の構築 新しい医師と患者の関係を築くために、診療情報の共有が重要。
チーム医療 患者を中心に置いた医療チームが連携して治療を行うこと。情報開示はチーム医療の推進に寄与する。
守秘義務 患者の個人情報を守る義務。情報開示の際にも慎重に対応する必要がある。

開示の意義

  • 理解に基づいて治療の効果を高める。
  • 相互の信頼関係を深める。
  • 自分の記録をみるという患者個人の権利を守る。
  • 情報を共有し、患者自身がチーム医療に参加する。

個人情報の保護

項目 説明
守秘義務 患者の秘密を守る義務。医療従事者が患者のプライバシーを保護するために必要な責務。
ヒポクラテスの誓い 医療従事者の倫理を定めた誓いで、守秘義務の起源とされる。
プライバシーの権利 個人の情報や秘密が外部と接点を持つ際に発生する法的権利。
個人情報保護法 個人情報の保護を目的とした法律。医療機関にも適用される。

個人情報保護法の概要

・OECDのプライバシーガイドライン8原則

原則 内容
収集制限の原則 情報は適法・公正な手段で収集され、必要な場合には情報主体の通知または同意を得ることが必要。
データ内容の原則 データは利用目的に沿ったもので、正確、完全、最新であるべき。
目的明確化の原則 データ収集の目的は明確にし、利用はその目的に合致するべき。
利用制限の原則 データ主体の同意または法律による場合を除き、収集目的以外で使用してはならない。
安全保護の原則 データは紛失、破壊、不正使用、修正、開示から合理的な安全保護措置により守られるべき。
公開の原則 データ収集の方法や利用目的、管理者等を明示し、情報を公開することが求められる。
個人参加の原則 自己に関するデータの内容確認や異議申立てが可能であるべき。
責任の原則 データ管理者は上記の諸原則を実施する責任を持つ。

この表は個人情報保護における8つの基本的な原則だよ。
診療情報管理士は多くの患者情報を取り扱う仕事だから個人情報保護は業務に大きく関わってくるんだ。だから、この辺りはしっかりと理解しておいた方がいいね。

個人情報保護法の要点

項目 説明
個人情報保護法の目的 個人情報の適正な取り扱いを通じて、個人の権利利益を保護し、情報の有用性に配慮しつつ利活用を促進することを目的とする。
事業者の義務 事業者は、保有する個人データに関して遵守すべき義務を負い、違反時には罰則が適用される。
医療・介護関係事業者の範囲 過去6ケ月以内のいずれかの日に特定の個人が5,000人を超えた事業者が対象。ガイドラインは5,000人未満の事業者にも遵守を求める。
個人情報の範囲 生存する個人を識別できる情報が対象。死亡後の情報も漏えい防止のために同等の安全管理が必要。

法律により事業者が義務づけられていること

項目 説明
利用目的の特定と目的外使用の原則禁止 個人情報の利用目的を特定し、その目的以外に使用することを禁止する原則。
利用目的の通知 個人情報を収集する際に、その利用目的を本人に通知または公表すること。
適正な取得 適法かつ公正な手段で個人情報を取得すること。
安全管理措置 個人情報の紛失、破壊、改ざん、漏洩を防ぐための適切な安全管理措置を講じること。
従業者の監督 個人情報を取り扱う従業者に対して、適切な監督を行うこと。
委託先の監督 個人情報の取り扱いを委託する場合、委託先に対しても適切な監督を行うこと。
第三者への提供の制限 本人の同意がない限り、個人情報を第三者に提供することを制限すること。
保有個人データに関する事項の公表 事業者が保有する個人データに関する基本的な情報を公表すること。
保有個人データの開示 本人からの請求があった場合に、保有する個人データを開示すること。
訂正および利用停止 本人からの請求に応じて、データの訂正や利用停止を行うこと。

病院の義務等としてガイドラインでまとめられている事項

項目 説明
利用目的の特定等(法第15条、第16条) 個人情報の利用目的を明確にし、特定すること。
利用目的の通知等(法第18条) 利用目的を本人に通知する、または公表すること。
個人情報の適正な取得、個人データ内容の正確性の確保(法第17条、第19条) 個人情報を適正に取得し、データ内容の正確性を確保すること。
安全管理措置、従業者の監督及び委託先の監督(法第20条~22条) 個人情報の安全を管理し、従業者や委託先の監督を行うこと。
個人データの第三者提供(法第23条) 本人の同意なく第三者に個人データを提供しないこと。
保有個人データに関する事項の公表等(法第24条) 保有する個人データに関する事項を公表すること。
本人からの求めによる保有個人データの開示(法第25条) 本人からの求めに応じて、保有する個人データを開示すること。
訂正及び利用停止(法第26条、第27条) 本人からの請求により、データの訂正や利用停止を行うこと。
開示等の求めに応じる手続及び手数料(法第29条、第30条) 開示請求に応じる手続きや手数料に関する事項を定めること。
理由の説明、苦情対応(法第28条、第31条) データの訂正や利用停止などの理由を説明し、苦情に適切に対応すること。

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