1-4 医学と医療の歴史・現代医療

わが国の医学と医療の歴史

漢方医学の時代・西欧医学の伝来・西洋医学の導入期

項目 説明
漢方医学 漢の時代に発達し、唐・宋の時代に医書にまとめられた中国医学。奈良・平安時代に日本で公の医学として採用された。
大宝律令 西暦701年に発布された規則で、医療に関する規定が含まれている。中国からの影響が強い。
医疾令 大宝律令に含まれる、医療に関する規則。
江戸時代 1603年から1868年までの日本の時代で、身分制度が固定された。医学も普及していった。
医は仁術 江戸時代の医師の倫理規範を示す言葉。貝原益軒の「養生訓」に由来する。
南蛮医学 西欧の医学の日本での呼び名。ポルトガルから伝来した。
蘭学 オランダ医学。西欧医学が日本に導入された時の呼び名。
解体新書 1774年に杉田玄白・前野良沢が翻訳し出版した西欧医学に関する書籍。
鳴滝塾 シーボルトが長崎で開設した医学塾。多くの日本人医師を育成した。
適適斎塾 大阪の緒方洪庵が設立した蘭学塾。
施薬院 1722年に江戸幕府によって創設された民のための病院。
博愛社病院 1886年に設立された赤十字の前身となる病院。
西洋医学 明治維新後に日本で正式に採用された医学で、ドイツ医学を模範としている。
ドイツ医学 明治時代に模範とされた西洋医学の一つ。
東京医学校 1871年に設立された、現在の東京大学医学部。西洋医学教育が始まった。
帝国大学 明治時代に設置された日本の大学。医学部も設置され、教育と研究の中心となった。
官立病院 明治時代に設立された、政府が設置した病院。
私立病院 1878年以降に増加した、民間が設立した病院。
医務局 1873年に文部省に設置された、医療に関する管理機関。
内務省 1875年に衛生局が設置された省庁。医務局の業務を引き継いだ。
伝染病予防法 1897年に発令された、伝染病の予防に関する法律。
医師法 1906年に制定された、医学教育と医師の身分免許に関する法律。
種痘法 1909年に発令された、種痘に関する法律。

大正時代から昭和初期の医療制度

項目 説明
大正デモクラシー 大正時代に見られた社会民主主義的な運動で、労働運動が盛んになった。
施薬救療事業 時の政府が行った労働者の救済活動で、社会主義運動の抑圧の一環として行われた。
恩賜財団済生会 施薬救療事業の一環として設立された施療医療を提供する団体。
医療の社会化運動 医療が社会保障の視点から検討されるようになり、農民や労働組合による医療利用組合設立が進んだ。
職域病院 産業の発展に伴い、大企業が設立した病院。
医師会 開業医の団体で、1907年に府県単位医師会が設立され、1916年に大日本医師会として統合された。
看護婦規則 1915年に制定された、看護婦に関する規則。
結核予防法 1919年に制定された結核対策に関する法律。
健康保険法 1922年に制定された保険医療制度の発足に関する法律。
薬剤師法 1925年に制定された、薬剤師に関する法律。
寄生虫病予防法 1931年に発布された寄生虫病の予防に関する法律。
診療所取締り規則 1933年に制定された医療法の前身で、診療所の取り締まりに関する規則。
保健所法 1937年に制定された、保健所に関する法律。
厚生省 1938年に内務省から独立し設立された、保健行政を担当する省。
国民医療法 1942年に制定された、戦時下の医療国家統制に関する法律。
医学専門学校 1943年に軍医など医師の速成のため設立された専門学校。
新医師国家試験制度 1946年に新しく定められた医師国家試験制度で、医学部卒業生に臨床病院実習が義務づけられた。
医療法 1948年に制定された、新しい医療制度に関する法律。

現代医療

チーム医療・EBM(Evidence-Based Medichine:根拠に基づく医療)

項目 説明
生物学的手法 生物学の原理を基にした研究手法で、動物実験などが含まれる。
臨床応用 医学の研究成果を実際の医療現場で診断や治療に活用すること。
要素還元的研究 複雑な現象を構成要素に分解して研究する手法で、医学が細分化される一因となった。
内視鏡 体内の視覚化を可能にする医療機器で、診断や治療に用いられる。
放射線診断 放射線を用いて体内の状態を診断する技術。
超音波診断 超音波を利用して体内の状態を診断する技術。
チーム医療 医療従事者が協力して患者中心の医療を行う方式で、情報の共有と開示が必要。
EBM (Evidence-Based Medicine) 科学的根拠に基づく医療手法で、臨床的判断を客観的データに基づいて行う。
メガスタディ 大規模な臨床試験で、EBMの根拠となるデータを提供する。
RCT (Randomized Control Trial) 無作為化比較試験で、EBMの精度の高い研究方法とされる。
メタアナリシス 複数の大規模試験結果を統合して分析する手法で、EBMの根拠を強化する。
EBMの定義 ①科学的根拠、②患者の価値観、③臨床技術の統合で、医療判断を行う手法。
EBMの実践手順 1. 問題点の抽出 2. 情報収集 3. 情報の吟味 4. 患者への適応 5. 評価。
インフォームド・コンセント 患者が治療に関する情報を理解し、自ら選択する権利を持つこと。
NBM (Narrative-Based Medicine) 対話と論述に基づく医療で、患者中心の医療実践における対話の重要性を強調。

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