医学と医療の歴史
伝説の医神
項目 | 説明 |
日本の医神 | 『古事記』や『日本書紀』に伝えられる大国主神や少彦名神が、医神として知られている。 |
中国の医神 | 神農が最古の医神とされ、牛首人身で薬効を民に教えたと伝えられている。「神農本草経」として後にまとめられた。 |
エジプトの医神 | 鳥首人身のトートが最古の医神とされている。 |
ギリシャの医神 | ケイロンがアスクレピオスに医術を教えたとされ、アスクレピオスの神殿がギリシャ各地に建てられた。 |
アスクレピオスの杖 | 蛇が絡んだ杖は健康、不老、医療の象徴で、蛇は再生と復活を、杖は生命、力、権威を象徴する。医学の紋章として使用されている。 |
古代の医学(~5世紀)
項目 | 説明 |
メソポタミアの医学 | 紀元前3000年頃、医療の専門職が存在し、油や牛乳が薬として用いられ、マッサージ療法が行われていた。 |
エジプトの医学 | 紀元前3000~1000年頃、薬草療法、創傷の手当て法、脱臼の整復法、歯痛の治療法が存在した。 |
インドの医学 | 紀元前1000~500年頃、バラモン教教典に基づき、薬物療法と外科的治療が行われていた。 |
中国の医学 | 紀元前1120~221年頃、『黄帝内経』などの医学書があり、当時すでに高度に発達した医学が存在していた。 |
『黄帝内経』 | 紀元前1世紀に刊行され、内容がヒポクラテス集典に匹敵する優れた医書。 |
ギリシャ医学 | 西洋医学の起源であり、ヒポクラテスが医療の基礎を築いた。 |
ヒポクラテス | 「医学の祖」と称され、病気の原因を体液の調和の乱れと説明し、自然治癒力を重視。 |
『ヒポクラテス集典』 | ヒポクラテスの弟子たちによってまとめられた医療の体系書。 |
アレキサンドリア医学 | ヘロフィロスとエラシストラトスが活躍した時代で、解剖学や生理学が発展した。 |
ヘロフィロス | 解剖学者であり、十二指腸の名称を名づけた。 |
エラシストラトス | 生理学者であり、心臓の弁の逆流を防ぐ仕組みを理解していた。 |
アレキサンドリア医学 | ギリシャ医学とローマ医学の間の時代に発展した医学。 |
ヘロフィロス | アレキサンドリア時代の解剖学者。十二指腸という名称を名づけた。 |
エラシストラトス | アレキサンドリア時代の生理学者。心臓の弁が逆流を防ぐ仕組みを理解していた。 |
ガレヌス | ローマ時代の著名な医学者で、臨床治療学、解剖学、生理学、病理学などに多大な貢献をした。 |
「炎症の四徴候」 | ガレヌスの著書で紹介された、炎症の特徴である「発赤、熱感、腫脹、痛み」。 |
「四つの気質」 | ガレヌスが提唱した、体液の調和による気質分類の概念。 |
中世の医学(5~16世紀)
項目 | 説明 |
中世西欧の医学 | 社会がキリスト教的宗教観に強く支配され、病気の原因が信仰心と関連づけられた時代。解剖禁止令やガレヌス学説の無批判な継承が特徴。 |
暗黒時代 | 中世西欧において、医学の進歩が停滞した時代を指す。 |
アラビア医学 | ギリシャ・ローマ医学がイスラム教国に伝わり発展。病院は国家によって建設運営され、診療録が作られた。 |
アッ・ラーズィ | イスラム医学者。『医学の貯蔵箱』を刊行。 |
アヴィセンナ | イスラム医学者。『医学典範』を編纂。 |
西欧の公衆衛生学 | ペストなどの伝染病の蔓延を契機に、水道設置や食品管理が盛んになり、公衆衛生学が発展。 ペスト・・・ |
サレルノ医学校 | 9~12世紀にイタリアのサレルノに建設された医学校。ヨーロッパ最古の医学校とされる。 |
ボローニャ大学 | 1158年にイタリアで創立されたヨーロッパ最古の大学。研究の自由が保証され、人体解剖が行われた。 |
中国の医学 | 漢の時代に発展し、漢方と呼ばれる。薬物療法や鍼灸術に優れ、木版印刷術により医書が出版された。 |
木版印刷術 | 中国で発明された技術。唐・宗の時代に発展し、医書の出版が盛んになった。 |
近世の医学 (16~19世紀)
項目 | 説明 |
ルネッサンス期の自然主義 | 自然に還る復古主義、ギリシャ医学の再認識、実証精神。 |
<重要な医学者と業績> | |
ベサリウス | ルネッサンス期の解剖学者。人体解剖を行い、1543年に『人体の構造に関する七つの書』を刊行。科学的医学の復興。 |
パラケルスス | 化学知識の医療応用、精神病を身体の病気とする考え。 |
パレ | 外科的治療、義手・義足、止血法の開発。 |
ハーベイ | 血液循環の解明、『心臓の運動』。 |
グーテンベルグ | 活版印刷の発明、医学の発展に貢献。 |
ヤンセン親子 | 顕微鏡の発明 |
フック | 細胞の発見 |
マルピギー | 毛細血管の発見 |
レーウェンフーク | 赤血球・細菌の発見 |
ラボアジェ | 呼吸の生理を研究 |
化学の発展 | 18世紀に炭酸ガス、水素、窒素、酸素が発見された。 |
ヒポクラテスに還れ | 17世紀、ギリシャ医学の再評価と自然治癒力の見直しを重視した運動。 |
シデナム | イギリスの開業医で、「イギリスのヒポクラテス」と呼ばれ、疾病分類を試みた。診療録管理の歴史上で重要な人物。 |
ブールハーフェ | オランダのライデン大学でベッドサイドティーチングを教育に導入し、臨床を重視する診療方法を広めた。 |
アウエンブルゲル | 打診法を紹介し、診断学上で重要な貢献をした。 |
ラエネック | フランスの内科医・病理学者で、肺結核などの胸部疾患の研究を通して聴診器を発明。 |
ハンター | イギリスの外科医で、臨床医学研究の流れを作り、エジンバラ学派を形成した。 |
ジェンナー | 種痘を開発し、天然痘から多くの人々を救った。 |
プラヴァーズ | 1852年に最初の注射器を作成。 |
病院医学の時代 | 1794年から1848年までのフランス革命期に、新しい医哲学が生まれ、臨床と研究が病院において行われた時代。 |
ブライト | イギリスの病理学者で、病理学の発展に貢献。 |
ロキタンスキー | ウィーンの病理学者で、病理学の発展に寄与。 |
ウイルヒョウ | 細胞病理学説を提唱し、疾病の原因を細胞の病変に基づくとした。 |
ベル | イギリスの生理学者で、神経系の研究に貢献。 |
ミューラー | ドイツの生理学者で、生理学の発展に大きく寄与。 |
ベルナール | フランスの生理学者で、消化器系や神経系の研究を行い、生理学の発展に貢献。 |
ゼンメルワイス | 産褥熱の研究から感染の概念を提唱し、手洗いや器具の消毒を推奨。 |
パスツール | フランスの生化学者で、発酵や腐敗の原因が微生物であることを発見し、低温殺菌法やワクチンの開発に貢献。 |
リスター | パスツールの研究に基づき、石炭酸による防腐法を手術に適用し、感染の合併症を減少させた。 |
コッホ | ドイツの細菌学者で、結核菌やコレラ菌を発見し、細菌感染の重要性を明らかにした。 |
北里柴三郎 | ベーリングと共に抗毒素を発見し、血清療法を実用化した。 |
志賀潔 | 日本の細菌学者で、赤痢菌の発見により細菌学の進歩に大きく貢献した。 |
華岡青洲 | 日本の医師で、麻沸散を用いた乳癌手術を1804年に成功させた、麻酔学の先駆者。 |
モートン | アメリカの歯科医で、1846年にエーテル麻酔法を発表し、近代麻酔学の発展に貢献。 |
シンプソン | イギリスの産科医で、1847年にクロロホルム麻酔法を発表した。 |
レントゲン | ドイツの物理学者で、X線を発見し、第1回ノーベル物理学賞を受賞した。 |
キュリー夫妻 | フランスの科学者夫妻で、ラジウムを発見し、放射線治療の基礎を築いた。 |
クレペリン | ドイツの精神科医で、精神医学に大きな貢献を果たし、その名を冠したテストもある。 |
フローレンス・ナイチンゲール | イギリスの看護師で、近代看護学の基礎を築き、看護教育を確立した。 |
看護覚え書 | フローレンス・ナイチンゲールが1859年に出版した、看護に関する有名な書籍。 |